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臨床病理 47(10) : 943-948, 1999
Japanese Journal of Clinical Pathology 47(10) : 943-948, 1999

第6回 日本臨床病理学会特別例会
第25回 日本医学会総会・分科会

シンポジウム1:21世紀に向けての臨床検査情報
―その付加価値と診療支援を中心に―


インターネットによる検査情報システムの開発と展望

西堀 眞弘*1

*1東京医科歯科大学医学部附属病院検査部
(〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45)

Strategic Challenges of the Internet to the Laboratory Informatics

Masahiro NISHIBORI, MD*1
*1Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University Medical Hospital, Tokyo

manuscript <some minor corrections will be made before publication>
The rapid and general spread of the internet brings a lot of trials for its applications to our fields also. They include delivery of various information using the home page or e-mail, online consultation systems, quality control systems through the internet and more. So far, the security issues have been well managed with skillful administration of software and hardware. A part of them have been achieved the outstanding merits of the internet, but mostly more devices or investigation will be required to realize their intrinsic great virtue.
The revolutionary progress of the network will never stop, rather will be accelerated more and more, and at last will lead us to the new era, in which all people in the world can communicate with each other at all times through the network, that may be named as the hyper-network community. So we all must considerate how to adapt our academic and medical field to the new era, rather than how to apply the internet in our field.


[Key Words] internet (インターネット), hyper-network community (ハイパーネットワーク社会), laboratory information system (臨床検査情報システム), laboratory medicine (臨床検査医学)



 かつて一部の研究者やマニアのものであったインターネットは、ブラウザと呼ばれる画期的閲覧ソフトが発明されて以来、瞬く間に社会的認知を得ただけでなく、今やあらゆる社会活動に不可欠と言っても過言ではなくなった。それでも「インターネットとは何か」を改めて説明することは容易ではないが、利用に当たっては少なくとも次の要点を理解しておけばよい。(1)手紙、電話、テレビ、ラジオ、パソコン通信など別々に行っていたあらゆる情報伝達・情報交換を、一元的にかつ革命的低コストで実現する世界規模のネットワークである。(2)費用が安いことの裏返しとして、通信の速度、品質やセキュリティーは保証されないが、実用上は急ピッチで技術的解決が図られつつある。(3)接続した個人すべてが情報の受け手であると同時に送り手となる。(4)刻々と変化し規模・技術共に爆発的に成長しつつある1)
 なかでも医療分野は早くから利用が始まった領域のひとつ2)3)で、我々の臨床検査領域でも各方面でさまざまな形態での意欲的導入が始まっている。本稿ではそのいくつかを紹介するが、紙面の関係で数多くの事例を割愛せざるを得なかったことを予めお断りしておきたい。

I.ホームページによる臨床検査情報の発信

 現在では文字・静止画だけでなく、音声・ビデオ画像・立体画像などもホームページで扱えるようになった。臨床検査領域でも学会、関連団体、関連企業あるいは個人による意欲的なページが続々と登場しており、現在国立大学病院の検査部門を中心にこれらを「臨床検査のページ」(Fig. 1http://square.umin.ac.jp/clin-lab/)に収集、整理するプロジェクトが進んでいる。既に膨大な数のページが掲載されているが、その多くは利用者のニーズに合った情報提供がなされていないため、さらに内容を充実させ十分な閲覧者数を確保することが課題である。また機運の盛り上がりにより開設までは至ったものの、運用をボランティアに依存し息切れするという共通の問題点も抱えており、恒常的な運営体制の確立が望まれる。
 わざわざお金と手間をかけて見たくなるような魅力あるホームページを作るには、予め開設目的と情報発信の対象者を明確にし、そのニーズを熟知すると同時に、目新しい技術に気を取られることなく、インターネットの特長を活かし、かつその限界をわきまえながら安定して運用するという、総合的かつ高度な技術が求められる。また医療情報を扱う場合は、患者の生命およびプライバシーについてさらに特別な配慮が必要となる。筆者が運用に関与している日本臨床検査医会のホームページ(Fig. 2http://www.jaclap.org/)は、比較的多くの閲覧者を得て既に3年以上順調に稼動しているが、技術的対策に加えて運用面にも十分な対策を施すことにより、今のところセキュリティ−上の問題等は発生していない4)Fig. 3)。
 具体的な技術的対策については言及できないが、運用面では次の点に配慮して掲載内容を選択している。
・個別症例が特定される内容は扱わない
・即時性が要求される内容は扱わない
・閲覧者が他の手段で信憑性を確認できない内容は扱わない
 また、不当な複製や盗用を防ぐことが困難で事実上著作権を保護する手段がない点については、暫定的に次のような運用原則を設けて対応している。
・著作者の明らかでない、あるいは著作者の了解が得られない文書は掲載しない
・印刷物に掲載される文書は版権所有者に了解を得ず掲載しない
・掲載後内容が全く追加あるいは更新されない文書は掲載しない
 なお、これはすべて内規としており、ホームページそのものには情報の利用責任等について特別な断わり書きは一切掲載していない。


Figure 1 The clinical laboratory home page.
Most of the home pages related to the clinical laboratory and laboratory medicine in Japan should appear at this page.




Figure 2 The home page of Japanese Association of Clinical Laboratory Physicians (JACLaP).
This page is one of the most active home pages related to the laboratory medicine in the world. Besides detailed information about the association, hot news, timely and useful topics, educational programs for the qualification exam, an online consultation and huge databases such as a handbook of new laboratory tests or a comprehensive list of commercial distributors are provided here.




Figure 3 The number of monthly access to the JACLaP home page.


II.電子メール新聞による専門医の情報交換5)

 インターネットを利用した電子メールは、ホームページの閲覧よりも繁雑で郵便よりも信頼性が低いが、一定の費用で相手にいつでも情報を送り込め、自分の都合に合わせて随時受け取れるという特徴がある。その潜在的用途は、通常の電話やファックスの代替だけではなく、例えば日本臨床検査医会では、電子メール新聞の発刊に成功し大きな効果をあげている(Fig. 4)。これまでに十分な実用性と、印刷物に比べ記事入稿から発刊までの時間短縮、編集作業の効率化、記事分量の自由度、印刷や郵送経費の節約が大きなメリットとして実証されており、機関紙等の発刊物は今後このような形態に変わっていく可能性が高い。


Figure 4 An electronic newspaper distributed using e-mail5).



III.コンサルテーションへの応用6)7)

 患者と主治医の間あるいは主治医と専門医の間をインターネットで結び、地理的・時間的制約を解消する試みである。現状ではプライバシーへの配慮から取り扱う内容にはある程度制限があるが、日本臨床検査医会のホームページ(前述)で運用中の「臨床検査ネットQ&A」(Fig. 5http://www.jaclap.org/consultation.html)には、既に全国から200件以上の質問が寄せられており、臨床検査医に対する潜在ニーズの掘り起こしに貢献している。このページには電子メールで気軽に質問できるだけでなく、代表的な質疑応答が順次掲載されるので、同じ質問ならすぐに回答を得ることができる(Fig. 6, 7)。
 電子メールはボランティアがリレー式に運ぶ鉛筆書きの葉書のようなものなので、プライバシーについては何の保護もされていないため、このような用途に適しているとは言えない。また初めての人から電子メール等で送られてきた相談に対し、医師が治療にかかわる指導を行った場合、無診察治療に該当し医師法に違反する恐れがある。しかし、その一方で画期的なメリットが期待できるうえ、ラジオで行われている医療相談などでは、患者が特定できる情報をすべて省略しても十分に用が足りているという事実は、運用の工夫により対処が可能であることを示している。そこでプライバシー侵害などの法的・社会的トラブルを未然に防ぐよう運用内規を充実させたところ、これまで特に問題は起きておらず、アクセス数も順調に増加している(Fig. 3)。


Figure 5 The 'net Q & A' page of the JACLaP home page.



Figure 6 An example showing how to make a question using e-mail.



Figure 7 An example of a question and an answer for it.



IV.検体検査の精度管理への応用

 複数の異なる施設で測定した精度管理検体や患者検体のデータを、インターネットを介して一箇所に集め、集中的に処理して施設間の比較を容易にし、外部精度管理を効率化しようという試みである。これまでに、ホームページに手入力して入力ミスを自動チェックする試み8)や、各施設の検査結果データベースからインターネットを介して自動転送する試み9)がなされている。新潟大学で開発中のシステムでは、参加施設において患者の測定値から求めた精度管理用データをオンライン入力または手入力しておくと、いつでも任意の検査項目や期間について多施設間の精度管理グラフや数値データを参照できる(Fig. 8, 9)。このシステムが実用化されれば、これまで事実上不可能であった、複数施設の精度管理データを一括して扱える貴重な共用データベースが実現され、全国的な検査精度の底上げに著しい効果を生むことが期待される。


Figure 8 A part of electronic input forms used for the multi-institutional quality control.




Figure 9 An example of quality control charts and corresponding numeric values.



V.形態検査の精度管理への応用10)-15)

 尿沈渣・血液像・微生物検査・免疫電気泳動検査・細胞診・心電図・超音波検査等の外部精度管理の際には、スライド写真等が配布されている。これはそれらの画像をホームページに掲載し、参加者による判定および回答、あるいは成績の送付をすべてインターネットを介して行う試みで、費用が安いうえ面倒な参加手続きも減るという大きなメリットが実証されている(Fig. 10)。ただし、この方法ではスライド写真などのアナログ画像をデジタル画像に変換する際、画像情報の一部が失なわれるため、診断に影響を与える恐れがある。そこで、コンピュータの画面上でどの程度正しく判定できるかについて、文部省の研究班による総合的な検討が進められている。
 昨年行われた予備実験では、画質の劣化については画像処理の工夫により診断への悪影響を回避できることが示唆されたが、全く同一のデジタル画像を配付しても、現状では表示装置の性能差により誤診が発生する恐れのあることが新たに判明したため、急遽その対策のための技術開発に研究の比重が移された14)15)Fig. 11、詳細は研究班ホームページ:http://square.umin.ac.jp/survey/を参照)。しかし、これはひとり形態検査の分野に留まる問題ではなく、遠隔医療や電子カルテの実現を目前に控えた医療全体にかかわる重要な課題である。そこで同研究班の共催により、本年5月に東京医科歯科大学において第1回デジタル医用画像の「色」シンポジウムが開催され、各診療分野、医用画像の専門家および理工系の色研究者が一堂に会し、問題意識の共有と解決方法へのコンセンサスについて議論が交わされた。詳細はシンポジウムホームページ(http://square.umin.ac.jp/medicolor/)で公開されているので、ご参照いただきたい。


Figure 10 An example page of the control survey of morphological laboratory tests using the internet.




Figure 11 A part of the results of an experimental evaluation of digitized typical morphological images observed with various display equipment14).
Results of the microbiology section. The larger the each numeric value is, the higher the evaluation given for each pair of images and displays was. The maximum value is six, and values less than three means the image displayed with the corresponding display was not usable for laboratory diagnosis. Notice that some displays got different results by images, and also some images got different results by displays. Besides, display No. 4, 6 and 7 were not usable with image No. M-06.



VI.将来の展望

 以上に紹介したインターネット利用の現状は、これからやってくるネット社会のほんの入り口に過ぎない。今はまだインターネットにアクセスできるのは人類全体のごく一部であり、かつアクセスは端末装置のある場所へ行くか、持っている端末装置をインターネットに繋いでいるときに限られ、その時間も日常生活のごく一部を占めるに過ぎない。しかし人間が社会的動物である以上、いつも誰かと繋がっていたいという欲求は、ネットワーク化の進展がこのような中途半端な状態で留まることを許さない。
 携帯電話でいつでもインターネットに接続できるサービスや、人工衛星を使って地球上のどこでも使える携帯電話のサービスが既に始まっている。やがて地球上のどこにいても好きなときにインターネットに接続できる、超小形の安価な動画像対応の携帯端末が実用化される。いつでもどこでも地球上すべての人々と互いに情報交換できるということは、火の獲得、印刷技術の発明、産業革命、コンピュータの発明に並ぶ革命的な出来事と考えられ、この状態に至った社会を「ハイパーネットワーク社会」と呼ぶことが提唱されている16)Fig. 12)。
 医療面では、いつでもどこでも、その端末を通じて知りたい健康情報を得たり、世界中から選んだ好みの医療機関で健康管理を受けることができる。そして、いざというときには直ちに適切な専門医への受診が手配され、まったく症状がない段階から最高水準の発症予防の技術が施される。不幸にも予防に失敗した患者のみが投薬あるいは手術の対象となり、治療後はその端末を使って症状緩和に必要なケアを受けながら、できるだけ健常人と同じ社会生活を送る。
 検査室では文献検索や専門家との相談、業者への問い合わせ、検査センターへの依頼と結果受け取り、さらには分析装置のメンテナンスや精度管理もインターネット経由で行われる。医療機関も互いにインターネットで接続され、患者が何か所受診していても、検査データを互いに取り寄せ、連携した診療ができる。家庭や職場では、検診センターとインターネットで結ばれた簡便なセンサーを使って、いつでも健康チェックが受けられる。


Figure 12 A concept drawing of the forthcoming hyper-network community16).
At present, not all people have access to the internet, the access is intermittent and not all kinds of information are exchanged through the internet (above). In the 21st century, almost all people have access to the global network at all times and the network becomes the most major medium for exchanging all kinds of information, that is the hyper-network community (below).



XII.おわりに

 展望として述べたことは決して夢物語ではないが、かといってそばで眺めていれば誰かが一足跳びに実現してくれるものでもない。現在のように「インターネットをどのように利用するか」を考えていればいい時代は瞬く間に過ぎ去り、ハイパーネットワーク化する社会の中で、われわれの属する学問領域および医療分野の新たな存在様式を模索する必要性に迫られるのは、そう遠い先ではない。それを先取りする意味でも、私達ひとりひとりが自分なりの時代認識を持ったうえで、安全で効果的なインターネットの利用法を工夫し、慎重に選択を重ねることが、より実りある検査情報システムを実現するための原動力として不可欠である。
 なお、本稿はインターネット上で公開しており、図表がよりオリジナルに近い画像でご覧いただけるほか、引用したホームページや文献はすべて文字をクリックするだけで呼び出せるようにしてあるので、こちらもご参照いただきたい(http://square.umin.ac.jp/mn/work19990401.html)。

文 献

1)
西堀眞弘:1時間でわかるインターネット・エッセンス.UIC選書 http://square.umin.ac.jp/mn/work19960329.html、1996
2)
西堀眞弘:臨床検査ひとくちメモ No.131 インターネットは医療や臨床検査の分野でどのように利用されているのでしょうか.モダンメディア、第42巻第9号、31-35、1996(http://square.umin.ac.jp/mn/work19960910.html
3)
西堀眞弘:インターネットで変わる医療.第7回日本光カード医学会論文集、13-16、東京、1996(http://square.umin.ac.jp/mn/work19961019.html
4)
西堀眞弘:インターネットを使って臨床検査医による診療支援活動をネットワーク化する研究.第16回医療情報学連合大会論文集、634-635、1996(http://square.umin.ac.jp/mn/jcmi16-2g14.html
5)
西堀眞弘:電子メール新聞を中心とした臨床検査医のネットワーク化について.第18回医療情報学連合大会論文集、862-863、1998(http://square.umin.ac.jp/mn/jcmi18-2k77.html
6)
西堀眞弘:臨床検査医のコンサルテーション活動にインターネットを用いる研究.第17回医療情報学連合大会論文集、796-797、1997(http://square.umin.ac.jp/mn/jcmi17-3g15.html
7)
西堀眞弘:インターネットを利用した臨床検査医による公開コンサルテーション.新医療 1998年9月号、100-103、1998(http://square.umin.ac.jp/mn/work19980901.html
8)
谷重喜他:インターネットによる精度管理調査システムの開発(抄).臨床病理 44(補冊):128、1996
9)
松戸隆之他:インターネットを介した地域精度管理システムの開発(抄).臨床病理 45(補冊):178、1997
10)
Masahiro Nishibori: A Control Survey of Morphological Laboratory Tests Using the Internet (abstracts). The proceedings of the19th World Conference of Anatomic and Clinical Pathology World Association of Societies of Pathologist, 46, 1997(http://square.umin.ac.jp/mn/work19970619.html
11)
西堀眞弘:形態検査の外部精度管理にWWWを利用する研究.第17回医療情報学連合大会論文集、798-799、1997(http://www.shimane-med.ac.jp/jcmi97/paper/024-263.htm
12)
Masahiro Nishibori, et al: Use of WWW in a Control Survey of Morphological Laboratory Tests. Proceedings of the Ninth World Congress on Medical Informatics, 803, 1998(http://square.umin.ac.jp/mn/medinfo98-803.html
13)
西堀眞弘:WWWを用いた超音波ビデオ画像の外部精度管理.第18回医療情報学連合大会論文集、862-863、1998(http://square.umin.ac.jp/mn/jcmi18-2k74.html
14)
西堀眞弘編:平成10〜11年度 文部省科学研究費補助金基盤研究(C)課題番号10672172 研究課題「インターネットを使って形態学的検査のコントロールサーベイを実施する研究」研究実績中間報告書、1999(http://square.umin.ac.jp/mn/work19990508b.html
15)
西堀眞弘:形態検査領域における標準化の試み.第1回デジタル医用画像の「色」シンポジウム抄録集、25-28、1999(http://square.umin.ac.jp/mn/work19990508a.html
16)
西堀眞弘:ハイパーネットワーク時代の人類.第9回日本光カード医学会総会論文集(総会長講演)、10-11、1998(http://square.umin.ac.jp/mn/work19981024.html

[-> Archives of Dr. mn's Research Works]
臨床病理 47(臨時号) : 11、1999年
Japanese Journal of Clinical Pathology 47(extra): 11, 1999

第6回 日本臨床病理学会特別例会
第25回 日本医学会総会・分科会

シンポジウム1:21世紀に向けての臨床検査情報
―その付加価値と診療支援を中心に―


S1-5 インターネットによる検査情報システムの開発と展望

東京医科歯科大学医学部附属病院検査部

西堀 眞弘

【→「臨床病理」掲載論文】


はじめに
 「インターネットとは何か」を説明することは容易ではないが、利用に当たっては次の要点を理解しておけばよい。(1)手紙、電話、テレビ、ラジオ、パソコン通信など別々に行っていたあらゆる情報伝達・情報交換を、一元的にかつ革命的低コストで実現する世界規模のネットワークである。(2)費用が安いことの裏返しとして、通信の速度、品質やセキュリティーは保証されないが、実用上は急ピッチで技術的解決が図られつつある。(3)接続した個人すべてが情報の受け手であると同時に送り手となる。(4)刻々と変化し規模・技術共に爆発的に成長しつつある。

1.ホームページによる臨床検査情報の発信  現在では文字・静止画だけでなく、音声・ビデオ画像・立体画像などもホームページで扱えるようになった。臨床検査領域でも学会、関連団体、関連企業あるいは個人による意欲的なページが続々と登場しており、現在国立大学病院の検査部門を中心にこれらを「臨床検査のページ」(http://square.umin.ac. jp/clin-lab/)に収集、整理するプロジェクトが進んでいる。ただし、多くは利用者のニーズに合った情報提供がなされていないため、十分に閲覧者を確保できていないのが実情である。
 わざわざお金と手間をかけて見たくなるような魅力あるホームページを作るには、利用者のニーズを熟知すると同時に、目新しい技術に気を取られることなく、インターネットの特長を活かし、かつその限界をわきまえながら安定して運用するという、総合的かつ高度な技術が求められる。また医療情報を扱う場合は、患者の生命およびプライバシーについてさらに特別な配慮が必要となる。筆者が運用に関与している日本臨床検査医会のホームページ(http://www.jaclap.org/)は、比較的多くの閲覧者を得て既に3年以上順調に稼動しているが、技術的対策に加えて運用面にも十分な対策を施すことにより、今のところセキュリティ−上の問題等は発生していない[1]。

2.電子メール新聞による専門医の情報交換
 インターネットを利用した電子メールは、ホームページの閲覧よりも繁雑で郵便よりも信頼性が低いが、一定の費用で相手にいつでも情報を送り込め、自分の都合に合わせて随時受け取れるという特徴がある。日本臨床検査医会では既に電子メール新聞の発刊に成功し、細かなノウハウを駆使してコストおよび迅速性の点で大きな効果をあげている[2]。

3.コンサルテーションへの応用
 患者と主治医の間あるいは主治医と専門医の間をインターネットで結び、地理的・時間的制約を解消する試みである。現状ではプライバシーへの配慮から取り扱う内容にはある程度制限があるが、日本臨床検査医会のホームページ(アドレスは前述)で運用中の「臨床検査Q&A;」には、既に全国から200件以上の質問が寄せられている。プライバシー侵害などの法的・社会的トラブルを未然に防ぐよう運用内規を充実させたところ、これまで特に問題は発生していない[3]。このページには代表的な質疑応答が順次掲載されるので、同じ質問ならすぐに回答を得ることができる。

4.検体検査の精度管理への応用
 尿沈渣・血液像・微生物検査・免疫電気泳動検査・細胞診・心電図・超音波検査等の外部精度管理の際には、スライド写真等が配布されている。これはそれらの画像をホームページに掲載し、インターネットを介して判定のうえ回答や成績をやりとりする試みで、費用が安いうえ面倒な参加手続きも減るという大きなメリットがある[6]。コンピュータの画面上でどの程度正しく判定できるかについて、現在文部省の研究班が総合的な検討を進めている(http://square.umin.ac.jp/survey/)。

5.形態検査の精度管理への応用
 尿沈渣・血液像・微生物検査・免疫電気泳動検査・細胞診・心電図・超音波検査等の外部精度管理の際には、スライド写真等が配布されている。これはそれらの画像をホームページに掲載し、インターネットを介して判定のうえ回答や成績をやりとりする試みで、費用が安いうえ面倒な参加手続きも減るという大きなメリットがある[6]。コンピュータの画面上でどの程度正しく判定できるかについて、現在文部省の研究班が総合的な検討を進めている(http://square.umin.ac.jp/survey/)。

6.将来の展望
 以上に紹介したインターネット利用の現状は、これからやってくるネット社会のほんの入り口に過ぎない。検査室では文献検索や専門家との相談、業者への問い合わせ、検査センターへの依頼と結果受け取り、さらには分析装置のメンテナンスや精度管理もインターネット経由で行われる。医療機関も互いにインターネットで接続され、患者が何か所受診していても、検査データを互いに取り寄せ、連携した診療ができる。家庭や職場では、検診センターとインターネットで結ばれた簡便なセンサーを使って、いつでも健康チェックが受けられる。

おわりに
 展望として述べたことは決して夢物語ではないが、かといって一足跳びに誰かが実現してくれるというものでもない。私達ひとりひとりが、安全で効果的な利用法を工夫し、慎重に選択を重ねることが、より実りある検査情報システムを実現するための原動力として不可欠である。

文 献
[1] 西堀眞弘:インターネットを使って臨床検査医による診療支援活動をネットワーク化する研究.第16回医療情報学連合大会論文集、634-635、1996年
[2] 西堀眞弘:電子メール新聞を中心とした臨床検査医のネットワーク化について.第18回医療情報学連合大会論文集、862-863、1998年
[3] 西堀眞弘:臨床検査医のコンサルテーション活動にインターネットを用いる研究.第17回医療情報学連合大会論文集、796-797、1997年BR> [4] 谷重喜他:インターネットによる精度管理調査システムの開発.臨床病理 44(補冊):128、1996年
[5] 松戸隆之他:インターネットを介した地域精度管理システムの開発.臨床病理 45(補冊):178、1997年
[6] 西堀眞弘:形態検査の外部精度管理にWWWを利用する研究.第17回医療情報学連合大会論文集、798-799、1997年

[-> Archives of Dr. mn's Research Works]