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3-G-1-5 第17回医療情報学連合大会 17th JCMI(NOV,.1997)

臨床検査医のコンサルテーション活動にインターネットを用いる研究

西堀 眞弘
東京医科歯科大学医学部附属病院検査部

An Internet Based Virtual Think Tank of Laboratory Medicine

Masahiro Nishibori

Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University Medical Hospital(mn.mlab@med.tmd.ac.jp)


Abstract:Because the number of clinical laboratory physicians are less than 400 and most of them are working at university hospitals, they can hardly respond to all requests of the consultation potentially made at various locations. The internet was adopted to create a virtual think tank, which provides easy access and comprehensive knowledge on laboratory medicine. Questions and corresponding answers commented by specialists are exchanged via e-mail, and typical 'Q and A's are offered to the public on the home page. 71 questions were received in 22 months and recently more than 200 times of access to the 'Q and A' page have been made in a month. Because e-mail has no protection for security, some privacy-sensitive questions were not answered. This kind of limitation of the internet expected to be eliminated soon.

Keywords: the internet, consultation, think tank, clinical laboratory physician, laboratory medicine



1.はじめに

 コンサルテーションは臨床検査医の重要な医療業務のひとつであるが、まだ全国に400名弱しかいないうえ多くが大学に所属し、100名以上が東京都に在住するなど地域による偏りが著しく、現状ではニーズに十分応えられない。そこで本研究では、インターネットを活用して臨床検査医へのアクセスを容易にすると共に、臨床検査医のネットワーク化を進めて共同コンサルテーション体制を確立し、ネット上に仮想シンクタンクの創設[1]を試みた。

2.方法

 昨年本学会で臨床検査医有志が試験運用中のホームページ「臨床検査医のページ」(http://202.242.169.152/clap/clap.html)について報告した[2]が、そのメニューのひとつに質問を電子メールで受け付ける旨を掲載した。なるべく広い範囲のニーズに応えるため、臨床検査に関する質問という以外には一切制限を加えなかった。ただし、質問者のプライバシー保護および法的・社会的トラブルの回避のため、個別症例が特定され得る内容や、直接的な診断行為および治療行為となり得る内容は扱わないという内規を設けた。寄せられた質問に対し、受付ではこの内規に照らして質問内容をチェックしたうえ、受領の電子メールを返送すると共に、日本臨床検査医会に所属する該当分野の専門家に回答作成を依頼した。回答は電子メールで質問者に返送するとともに、その一部を、質問者と回答者の了解を得て編集のうえ「代表的Q&A」のページ(http://202.242.169.152/clap/consultation.html)で一般に公開した。本コンサルテーション活動について特にアナウンスはしなかったが、「臨床検査医のページ」はUMINのホームページ、臨床検査関係の業界新聞、専門誌および商業誌、あるいは医学医療関係の単行本などで紹介され、認知されていった。

3.結果

 寄せられた質問の件数および「代表的Q&A」への掲載数につき月次の推移を図1に示す。質問者の職種は、医師(14件)、臨床検査技師(31件)、大学生・大学院生(4件)、その他(7件)および不明(15件)で、所属は大学病院(7件)、大学病院以外の医療機関(30件)、大学・短期大学(4件)、企業(7件)および不明(23件)、その所在地は北は北海道から南は宮崎県まで19都道府県に渡った。質問内容は、臨床検査分野では一般(7件)、血液(7件)、生化学(27件)、免疫血清・輸血(12件)、微生物(5件)、生理(4件)、その他(5件)で、それ以外では医療相談(7件)およびその他(2件)であった。臨床検査分野では内容が専門的判断を要するもの(41件)および教科書的あるいは文献検索的なもの(18件)に分かれた。回答に協力を得た専門家は36名で、一人当たりの担当件数は最低1件から最高18件であった。
 メニューページである「臨床検査医のページ」および「代表的Q&A」のページへのアクセス件数の推移を図2に示す。クライアントマシンのドメイン名を見ると、大学(ac.jp:106)、政府機関(go.jp:11)、企業またはプロバイダー(ad.jp, co.jp, ne.jp, or.jp:1045)、国外(jp以外:96)、不明(185)と多岐に渡っており(数字は1997年5月〜6月のクライアントドメイン数)、多数の閲覧者を得ていると考えられた。なお、一部の質問者からは回答内容および本コンサルテーション活動に対し高く評価する礼状が寄せられた。またプライバシーや回答内容に関し苦情やトラブルは全く経験しなかった。

4.考察

 インターネット上ではこれまでにも診療相談や中毒などの質問に答えるサービスが登場しているが、特定分野の専門医集団が共同コンサルテーションを試みている研究は他に例を見ない。これまでの運用経験により、質問者の所属や所在地に制約を受けずに数多くの質問が寄せられたうえ、代表的Q&Aにも多くの閲覧者を得、その効果と社会的ニーズの大きさが実証された。また、近い将来WWWや電子メールのセキュリティが十分整備されれば、質問内容の制限が不要となり、さらに有用性が高まる。今後は、運営や回答の負担増大への対策、回答体制の組織化、質問のレベルによる取り扱いの区別等が課題である。

謝辞

 コンサルテーションへの回答や「臨床検査医のページ」の運営にご協力いただいている日本臨床検査医会会員有志に深く感謝いたします。


図表

図1、質問件数の推移


図2、ホームページへのアクセス数の推移


参考文献

[1]木村 聡:検査医会への一提案 コンサルテーションに答えられる電脳情報網を創設しよう、LabCP Vol.13:128-129、1995
[2]西堀眞弘:インターネットを使って臨床検査医による診療支援活動をネットワーク化する研究、第16回医療情報学連合大会論文集、634-635、1996



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