Meat the Expert Seminar 遠隔医療と色情報 高橋 康弘 東京理科大学 The 1st Symposium of the 'Color' of Digital Imaging in Medicine Meat the Expert Seminar How to Manage Color in Telemedicine Yasuhiro TAKAHASHI Science University of Tokyo Summary In some practical applications of telemedicine, lack of accurate color reproduction is a critical problem. Color transmitted to a distant place and reproduced on a display possibly affected by difference in illumination (Fig. 1), characteristics of the camera (Fig. 2, Fig. 3), and modification made during transmission. In this paper, a technique of compensating distorted color is introduced, in which a color chart taken simultaneously with the object is used to adjust color values of displayed images so as to reproduce the same color as the original chart. To calculate compensated color values, a proper formula of determinants (Formula. 1, Formula. 2), an appropriate look-up table (Fig. 4) and a color representation system of L*a*b* (Fig. 5) are used. A computer program is available to perform this process automatically (Fig. 6). As telemedicine spreads into various fields of clinical practice, the importance of color compensation is expected to increase. |
第二に,被写体を撮像する際のカメラの特性による色再現誤差である。被写体の色情報R,G,Bを正しく撮るためには,カメラの感度が受像機の三原色から定められる等色感度である必要がある。しかし,等色感度は図2に示すように負の部分を含むため,その実現は容易ではなく,1つの解決法として負感度部分をエプスタイン近似により補償する方法がある。この場合,多くの被写体を対象とすれば,平均としてよい近似を与えるが,特定の被写体に対しては逆に大きな誤差を生じてしまう。図3には各種の色票に対して生じる誤差を示す【2】。 図2 NTSC方式の等色感度
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第三に伝送に関する誤差である。たとえばカメラで得られた入力信号を伝送に適した
NTSC
伝送信号に変換した場合,その色信号処理によって生じる誤差がある【3】。また,伝送速度によっては画像の圧縮が行なわれるが,圧縮によっては正確にもとの情報が再現されず,それに伴う色情報の損失が生じる。 以上のように,遠隔医療システムにおける観察側モニター上の被写体の色情報は,照明系,撮像系,伝送系の各特性の影響を受けることにより歪みが生じてしまい,本来の正しい情報を保っていない。そこで,これらの各特性によらず常に一定の色情報を観察側モニターに再現することを色再現の目標とする。そのために,値が既知である色票【4】を被写体とともに撮像し,伝送系を介して観察側モニターに入力される色票の値が各特性によらず常に同じ値となるように補正を行なうことで,被写体の色情報を正確に再現する。そのためには,これらの特性を何らかの手段により把握し,補正を行なわなければならない。しかし,各特性は機器やシステムに依存し,系全体の特性を把握することは不可能である。そこで,照明系を含めた被写体の撮像から伝送系を介して観察側モニターに入力するまでの一連のシステムをブラックボックスとして扱うことを考える。 3.色再現 1)多項式近似による色再現 多項式近似による方法として,次式のような3×3行列を用いた色補正法がある【5】。これは,補正前の値をY=(y1 y2 y3),補正後の値を Z=(z1 z2 z3)として,(1)式により変換を行なう。 |
行列の各要素は最適化により求められるが,1つの例として観察側モニターに再現された色票の値をYi,既知の色票の値をZiとして(ただし,i=1,...,n),次式で示すEを最小にする行列Gを最小二乗法により求める方法がある。
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三次元LUTで,(y1 y2 y3)の各々から
n
個ずつサンプル点をとるとすれば,合計
n
の3乗個の格子点に対するデータを持つことになり,各々の点に対して(z1 z2 z3)が対応している。 サンプル点の数を増やせばそれだけ精度よく補正が行なわれるが,その分手間もかかり,通常,なるべく少ないサンプル数で LUT を構成する。したがって,変換する点が格子点上にない場合は補間で対応する値を求める。 3)色空間の非線形な歪みに注目した色再現【4】 遠隔医療システムにおける色空間の歪みは複雑であり,非線形に生じているということに注目した手法について紹介する。 補正にはL*a*b*表色系を用い,色の明度を表すL*値と,色相・彩度の属性を総合して考えられた知覚色度を表すa*b*値をそれぞれ独立に扱い,被写体とともに撮像された既知の色票の値と観察側モニターに再現された色票の値との色差がなくなるように補正を行なう。 a*b*値は,図5に示すようにa*b*平面を6領域に分割し,各領域で,1)で紹介した補正行列(ここでは2×2行列)をそれぞれ求め,その行列により変換する。また,L*値についても各領域でそれぞれ補正する。 この時,伝送されてきた画像ごとに色票の値を一色ずつ抽出していては大変手間がかかり実用的ではなく,色票部の自動抽出と自動計測技術が不可欠である。そこで,色票の自動抽出,色補正からなるアプリケーションを作成した。本アプリケーション(図6)は,照明系を含んだ遠隔画像表示システムの系全体をブラックボックスとして扱っているために,すでに遠隔医療システムとして構築された現場においても,色票を患者に渡すだけで従来のシステムをそのまま利用でき,多くの現場に適用することが可能である。 図5 a*b*平面
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4.まとめ 今日,遠隔医療は実験段階のものも含め,多くの現場で実施されている。患者自身の映像を主に扱う遠隔在宅医療において,遠隔医療システムで生じる色再現誤差は解決すべき重要な課題である。そこで,本稿では遠隔医療システムにおいて色再現誤差が生じる原因について示し,その解決法として幾つかの色補正法を紹介した。今後は,内科診療・皮膚科診療・リハビリテーション指導・介護指導・福祉などの現場で積極的に遠隔映像伝送機器が使用されていくと思われるが,とくにカラー画像が必要となる内科診療・皮膚科診療においては医療現場という性質上,患者の情報は正確に把握する必要があり,これらの分野においても色補正技術はますます重要になってくると考えられる。 参考文献 【1】http://square.umin.u-tokyo.ac.jp/~enkaku/ 【2】斎藤利成:新編色彩科学ハンドブック,24章 カラーテレビジョン,東京大学出版会,1985. 【3】応用物理学会 光学墾話会 編:色の性質と技術,朝倉書店,pp. 112-140, 1986. 【4】 高橋康弘,渡部貴利,高木幹雄:遠隔医療における色補正,遠隔教育・遠隔医療シンポジウム,pp. 47-50, 1999. 【5】 大田 登著:色再現工学の基礎,コロナ社,pp. 97-199, 1997. |