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臨床病理(第46回日本臨床病理学会総会) 47(補冊) p284
P-151

インターネットを用いた形態検査診断への表示装置の機種間差の影響

西堀眞弘*1

*1 形態検査インターネットサーベイ研究班
*1 東京医科歯科大学医学部附属病院検査部

first edition<Last updated, Nov. 12, 1999>

【目的】 従来より形態検査のコントロールサーベイは判定用画像をスライド写真にして配付していたが、これをホームページに掲載すれば著しくコストが低減されるうえ、画像の複製、輸送あるいは保存による色調変化等の心配がなくなる[1]。その実現性を検証するため、著者が研究代表者を務める形態検査インターネットサーベイ研究班では、ホームページの画像が医学的所見を再現できるかどうか、および表示装置の性能差が診断に影響しないかどうかにつき検討した。

【方法】 尿検査、血液検査、微生物検査および病理検査の典型的標本から判定用のデジタル画像を計36枚作成し、代表的コンピュータ7機種(CRT4機種、液晶3機種)による表示像を、それぞれの分野の複数の専門家が6段階で評価した。

【結果】 大部分の画像は正しく診断できると評価されたが、評点は画像と機種の組合せ毎に大きく異なり、微生物検査の1画像は3機種で、病理検査の1画像は1機種で診断不能とされた。評価の優劣は表示解像度には依存せず、主な原因は機種間に存在する色の再現性のばらつきにあると考えられた

【結論】 形態検査画像をインターネットを介して利用できれば、コントロールサーベイだけでなく、電子教科書や遠隔コンサルテーションなど幅広い応用が期待できる。ただしそのためだけの専用機種をすべての利用者が揃えることは現実的でなく、汎用のパソコンなどを他の用途と共用する形になると考えられる。今回の結果から、現在普及している機種を利用者が自由に選んで用いた場合、多くの場合は十分診断できるが、機種と画像の組合せによっては、一部のものが誤って診断されてしまう恐れがあることが明らかとなった。

【展望】 本研究班では急遽研究計画の一部を変更しその対策を検討したが、表示装置として用いられる可能性のあるCRT、液晶パネル、プラズマディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶プロジェクター等はそれぞれ全く発色原理が異なるうえ、照明条件にも影響されるため、ハードウエア的な解決は当面困難であるとの結論に達した。そこで発想を転換し、多少性能差があっても診断が狂わなければよいという考え方で、実務上の問題を解消するための新たな方法の研究開発を進めている。  また今回の検討は形態検査を対象としているが、同じ問題は遠隔医療や電子カルテの実用化に当たってすべての医療分野にも生じうるため、問題意識の共有と解決へのコンセンサス形成を目指して「第1回デジタル医用画像の『色』シンポジウム」が本研究班の共催により開催されたので、本発表ではその概要も併せて報告する。

(本研究に多大な貢献をいただいている研究班員各位に対し厚くお礼を申し上げます。 )

(本研究の一部は平成10年度文部省科学研究費補助金 基盤研究(C)課題番号10672172による)

【文献】西堀眞弘、形態検査の外部精度管理にWWWを利用する研究、第17回医療情報学連合大会論文集、798-799、1997年


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