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臨床病理 40(補冊) : 236、1992年
Japanese Journal of Clinical Pathology 40(Suppl.) : 236, 1992

第39回日本臨床病理学会総会

検体検査トータルシステムの検体管理

―検査精度に影響する因子のトータルな管理を目指して―

西堀眞弘*1、奈良信雄*2、椎名晋一*3、萩原三千男*4

*1,2,3東京医科歯科大学医学部臨床検査医学
*4東京医科歯科大学医学部附属病院検査部

Development of a Total Automation System for the Clinical Laboratory
-Complete Controll of Every Factors Affecting Quality of the Analysis-

Masahiro NISHIBORI*1, Nobuo Nara*2, Shin-ichi Shiina*3 and Michio Hagihara*4

*1,2,3Department of Laboratory Medicine, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo
*4Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University Medical Hospital, Tokyo

[published edition]
【はじめに】 私共は21世紀にふさわしい先進的な検体検査を実現するため「7つのトータル化」を基本構想とする「検体検査トータルシステム」の開発に着手し、第37回および第38回総会で経緯を報告してきた。今回はこのシステムにおける検体管理の考え方につき報告する。
【目的】 検査精度の確保には分析過程の精度向上だけでなく適切な検体管理が不可欠であるが、通常は検体採取・運搬が検査部の管轄外であること、検体の種類や測定項目により管理すべき要因が多様であることなどから、実務上すべてを網羅することは容易でなく、現在一般化している方法では十分でない可能性がある。そこで本来の必要条件を洗い直し、本システムの要求仕様に正確なニーズを反映させて将来に禍根を残さない標準化を目指すと共に、現在得られる技術を用いその実現に挑戦する。
【方法】 現在一般的に用いられている臨床検査の教科書、参考書および大手検査センターの総合検査案内等を参考にすると共に、今後登場すると予想される新しい検査についても検討し、検査精度に影響する因子および各々の現在の問題点をリストアップした。次いでこれらを基に望ましい管理方法を考案した。
【結果】 管理すべき因子は検体の温度(室温・冷蔵・通常凍結・-80℃凍結)、蒸発、ガス分圧、検体への異物接触(反応惹起・吸着)、振動、電磁気(可視光線・他の電磁波・電気・磁気)、コンタミネーション(採取時・サンプリング時・全血保存時の血球成分)であり、これらを採取・運搬・前処理・分析・保管・再分析・廃棄の各時点で時間的要素を含め監視、記録または制御する必要がある。現状では採取から前処理までの温度、保管時の温度と蒸発等はある程度管理されているが、補体の37℃保温、冷蔵によるLDHアイソザイムの失活、薬物の分離材への吸着など見落とされ易い点は多々ある。また従来の搬送システムでは検査室内の搬送時の温度、蒸発さえ管理されておらず、血液ガス分析や失活の速い特殊項目には対応できない。さらに遺伝子検査、サイトカイン等の最先端の項目では、はるかにきめ細かな管理が必要となる。
【結論】 従来の人手に頼る検体管理は今後の検査の進歩に対応できない可能性が高い。私共のシステムでは、検査精度に影響する上記因子のセンサー、それらの因子を制御できる各種自動処理装置およびこれらを統合管理できるコンピュータを組み込むことにより総合的な解決を図る。

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